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  • 田近憲三蒐集拓本コレクション

    南画家の田近竹邨を父に持つ、美術評論家田近憲三氏は、中国学者長尾雨山の薫陶を受けて中国を中心とする拓本の蒐集に情熱を燃やしました。当館で収蔵するコレクションは916件で、その内訳は剪装本566件、全搨本325件、軸装20件、巻子装5件です。

    剪装本には田近氏直筆の解題、考証が付され、その内174件は自ら剪装本に装幀したものです。手ずからの装幀は表紙に緞子装が施されており、その判別は容易です。このような経緯から考えると、剪装本こそ田近氏が自らの眼で吟味した一群といえるでしょう。一方、全搨本は、装幀設計図が付されたものもありますが、基本的に未整理の状態で当館に収蔵されたものです。

    田近コレクションは『書跡名品叢刊』や『書品』の底本としても用いられる良質のものです。ただ、その真価は、蒐集当時まだ知られていなかった石碑の拓にまで及んでいたことにあります。美術評論家としての田近氏はしばしば無名の画家に注目し、その才を評価していました。拓本もまた同じことが言えるようです。

     

     

    曹全碑、後漢・中平2年(185)、紙本墨拓、一帖、31.8×20.5

     

    漢司隷校尉司馬芳残碑、西晋、紙本墨拓、一帖、33.5×22.4

     

    中嶽嵩高霊廟碑、北魏・太安2年(456)、紙本墨拓、一帖、32.9×17.2

     

     

    牛厥造像記、北魏・太和19年(495)、紙本墨拓、一帖、30.5×17.1

     

    英貞武公李勣碑、唐・儀鳳2年(677)、紙本墨拓、一帖、33.8×21.1

     

     

     

     

  • 松井如流蒐集拓本コレクション

    吉田苞竹のもとで『碑帖大観』や『書壇』の編集に携わった松井如流氏は、その経験を活かし、戦後は『書品』や『書跡名品叢刊』で日中古今の書を論じて戦後の書に大きな影響を与えました。碑法帖の蒐集は戦前に始まり、多くの佳拓を所蔵しました。当館には131件の拓本が収蔵され、その内訳は折本装102件、軸装19件、全搨未表装9件、巻子装1件です。後漢を中心に古隷も含めた隷書の碑帖が4割ほど、続いて五胡十六国時代の楷書、唐の褚遂良や顔真卿などへの関心の高さが窺えます。如流は自らの所蔵品を底本に『書品』や『書跡名品叢刊』でこれらの拓本の解説を遺しています。また、法帖としては「停雲館法帖」「秋碧堂法書」などがあります。摩崖だけでは補いきれない筆意をこれらの佳拓に求めたのでしょう。如流氏の作品コレクションとあわせ見ることで、双方の魅力が一層増すように思われます。

     

    開通褒斜道刻石、後漢・永平9年(66)、紙本墨拓、一帖、36.0×21.6、松井洋子氏寄贈

     

    西狭頌、後漢・建寧4年(171)、紙本墨拓、一帖、35.5×18.5、松井洋子氏寄贈

     

    鄭羲下碑、鄭道昭、北魏・永平4年(511)、紙本墨拓、一帖、39.0×22.2、松井洋子氏寄贈

     

    景龍観鐘銘、睿宗、唐・景雲2年(711)、紙本朱拓、一帖、18.9×10.7、松井洋子氏寄贈

     

    顔氏家廟碑、顔真卿、唐・建中元年(780)、紙本墨拓、四帖、31.7×19.0、松井洋子氏寄贈

     

     

     

     

     

  • 古谷蒼韻蒐集法帖コレクション

    中野越南に私淑し、いわゆる帖学派の作家として知られた古谷蒼韻氏もまた、当館に多くの法帖を寄贈しています。42件の原拓類をはじめ、影印本などが収蔵されています。古谷コレクションについては、学書に直接関わりあるものを重視して形成されたものと見られ、零本であっても、必要と認めるものであればコレクションに加えていました。例えば「宝晋斎法帖」は巻一、二、四の三冊を蔵し、なかでも王羲之の十七帖などを繰り返し臨書してきたようです。こうした法帖や影印本を駆使しながら古人の筆意をたどっていったものと考えられます。

     

    宝晋斎法帖、三帖(零本)、紙本墨拓、古谷蒼韻氏寄贈

     

     

    停雲館法帖、十二帖、紙本墨拓、古谷蒼韻氏寄贈

     

     

    粛府本淳化閣帖、十帖、紙本墨拓、古谷蒼韻氏寄贈

     

     

    絳帖、六帖、紙本墨拓、古谷蒼韻氏寄贈

     

    秋碧堂法書、六帖、紙本墨拓、古谷蒼韻氏寄贈