松井如流蒐集拓本コレクション

吉田苞竹のもとで『碑帖大観』や『書壇』の編集に携わった松井如流氏は、その経験を活かし、戦後は『書品』や『書跡名品叢刊』で日中古今の書を論じて戦後の書に大きな影響を与えました。碑法帖の蒐集は戦前に始まり、多くの佳拓を所蔵しました。当館には131件の拓本が収蔵され、その内訳は折本装102件、軸装19件、全搨未表装9件、巻子装1件です。後漢を中心に古隷も含めた隷書の碑帖が4割ほど、続いて五胡十六国時代の楷書、唐の褚遂良や顔真卿などへの関心の高さが窺えます。如流は自らの所蔵品を底本に『書品』や『書跡名品叢刊』でこれらの拓本の解説を遺しています。また、法帖としては「停雲館法帖」「秋碧堂法書」などがあります。摩崖だけでは補いきれない筆意をこれらの佳拓に求めたのでしょう。如流氏の作品コレクションとあわせ見ることで、双方の魅力が一層増すように思われます。

 

開通褒斜道刻石、後漢・永平9年(66)、紙本墨拓、一帖、36.0×21.6、松井洋子氏寄贈

 

西狭頌、後漢・建寧4年(171)、紙本墨拓、一帖、35.5×18.5、松井洋子氏寄贈

 

鄭羲下碑、鄭道昭、北魏・永平4年(511)、紙本墨拓、一帖、39.0×22.2、松井洋子氏寄贈

 

景龍観鐘銘、睿宗、唐・景雲2年(711)、紙本朱拓、一帖、18.9×10.7、松井洋子氏寄贈

 

顔氏家廟碑、顔真卿、唐・建中元年(780)、紙本墨拓、四帖、31.7×19.0、松井洋子氏寄贈