3、中林梧竹と三輪田米山
3-2、中林梧竹「四言詩」
中林梧竹の魅力はそのスケールの大きさにあるでしょう。今回ご紹介する四言詩もまた梧竹の生き様が感じられる一作です。
煮字療饑 尋詩作活
借天為紙 汲海濡毫
鋳大人先生法家貴属
日本中林梧竹
篆刻家の衛鋳生の求めに応じたこの作は、開通褒斜道碑を彷彿とさせる穏やかな隷書で揮毫され、力みや作為は全くありません。大陸との行き来が盛んになった明治時代は、日本の書家が本場の書法に強いあこがれを抱いた時代でした。しかし、大陸に帰る衛鋳生に「日本中林梧竹」と添える彼の書にてらいは微塵も見られません。飾らない書美の世界がここにはあります。
衛鋳生は梧竹に揮毫を依頼した時、成田山新勝寺に建立された梧竹揮毫の般若心経碑を話題にして梧竹の関心をひいています。
その碑は現在も成田山公園内に現存しています。
普段、現代でも通じる独創的な書の世界を展開する梧竹ですが、この碑は忠実に王羲之の『集字聖教序』を臨書しています。(山﨑亮)
【掲載作品】
四言詩 中林梧竹 明治23(1890)年頃制作 紙本墨書 対幅 134.0×31.2×2 成田山書道美術館蔵