7、西谷卯木
7-2、西谷卯木 不屈の魂
大字仮名運動が戦後のかな書に大きな影響を与えたとことはよく知られるところですが、壮年期から晩年の作品に至る遺作の収蔵ができた当館の西谷卯木コレクションでは、その変化を如実に感じることができます。
そこで今回ご紹介したい作品は、卯木の若かりし頃の作品です。
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どちらも日展出品作です。
日展出品の初期に展開された平安古筆を連想させる確実な細字表現は、空襲で左腕を失ったダメージを全く感じさせない完成度で、古典習熟の到達度が推し量られます。高野切をはじめとした様々な古筆から滋養を得る一方、機関紙「かなとうた」で、すでに昭和13年に大字仮名の可能性について言及するなど早くから大字への関心を示していた卯木はこの後、昭和32年の日展で特選受賞作となった「乗鞍は」を皮切りに中字、大字作品を積極的に発表します。後年、行末が右に流れる作品表現をその身体的事情からと評する意見もあったようですが、掲載の作品を見ると卯木が後発的に会得した表現であったことは明らかなようです。唯々、不屈の精神に驚嘆するばかりです。(山﨑亮)
【掲載収蔵作品】
※1小町集 1冊 19.9×17.6㎝ 昭和28年第9回日展出品作 正筆会寄贈
※2伊勢集 1冊 22.0×16.8㎝ 昭和30年第11回日展出品作 正筆会寄贈